Les Damies Report

13 Septembar 1997Posted by czr

Les Damies Report

1997年の春くらいからフランスでアルピーヌ・プロトの集まりがあると聞いていたが、8月、レ・ダミエからの招待状を手にした時、フランス行きを決心した。北京での学会を中途で切り上げ、まずフランス行きのチケットを手配し、A210を空輸すべく友人(某航空貨物会社所長)に頼み、フランス在住の友人、ジェラール直子さん宅へ送る手配を終えて、9月12日に名古屋を出発した。 ジェラール直子さんの御主人は、宗教哲学(主に道元の研究者)の専門家である。古文漢文はもちろんのこと、日本語に関しては、私の知らない文章を理解ずる人であるが、フランス人でありながらアルピーヌにはまったく興味がない。逆にアルピーヌをわざわざ日本から持ち込み、アルピーヌに関しては専門的な知識(自称ながら)を持っているこの私とは、妙なとりあわせである。そんな彼の奥様である直子さんは、私の子供の頃からの知人で、姉と呼べるような存在の方である。  9月12日、21時30分。フシュロルのジェラール邸に到着。A210がお世話になっているT.D.F.の加藤哲男氏に迎えられる。彼によると左後輪のタイアがはずれそうとのことで、修理を施し待機していた運送屋さんにサーキットまでの輸送を頼む。23時、トレーラーに乗ったA210が出発した。


13 Septembar 1997
はるばる日本からA210とともにこのイベントに参加した。

翌朝、私たち4人(直子さん、加藤哲男氏、私の妻、そして私)でモンレリーへ。早速受け付けを済ませ、カーナンバー53をもらう。哲男氏の同乗で慣熟走行 に入る。2周目、第2ヘアピンにて左前輪より異常音が発生、振動が激しくなり、ヘアピンを抜けたところで右側のグリーンヘ寄ると、同時にタイヤが脱輪し前 方へ飛んで行く。さて困った。私は飛んでいったスピンナーナットを探しに、哲男氏はタイヤを取りに向かう。なんとかふたりで固定し、ゆっくりとピットヘ戻 る。特別な問題はなく4輪とも再度レンチで増し締めし、それからは脱輪もなかった。イベントの進行は実にゆったりしたもので、日本であれば予定通りに事が 運ぶのだが、こちらは時間になっても集まらない。その上みんなおしゃべりで、その場の様子で走行を開始するという、実にフランス的というか、のどかな雰囲 気である。


レデレと一緒にポーズをとる筆者(左)とT.D.F.の加藤氏(右)。

フリー走行の時間となり、私は3.406kmのコースをゆっくりと走行。半年前にコンタクトポイントのスプリングが折れて修理してからタイミングが合わな いため、4500rpmくらいからエンジンの吹けが悪く、早めのシフトアップを強いられる。10時頃だろうか、ピットに戻ると、ジャン・レデレ氏が待って いてくれた。昨年パリでお会いして以来、今回で2度目である。彼も哲男氏と私のふたりを歓待してくれている様子だ。しかも、レデレ氏の隣には、69年のル マンに出場したアラン・セルパッチ氏がいるではないか。レデレ氏を通じ『是非ともA210を運転してみたい』とのこと。もちろんふたつ返事でOKし、助手 席に座りセルパッチ氏にステアリングを委ねた。さすがに手慣れたもので、彼はまったくのノーミスで周回を重ねた。感激!


筆者のドライブでバンクを行くA210。今回はアラン・セルパッチもそのステアリングを握ったが、
そのドライビングのスムーズさにいたく感激!

今回はレデレ氏に、A210の風洞実験の記事を掲載したSUPER CG No.17を持っていったのだが、それを見るや『今日は空力の専門家が来ているよ』といって私をピットへ連れて行き、引き合わせてくれたのがなんとマルセ ル・ユベールその人であった。優しい小さな目と白い髪のごく普通の人という印象で、風洞実験のぺージを開いてはしばらく話が弾んだ。ビュッフェスタイルの 昼食をはさんで、午後からはアルピーヌのプロトタイプやモノポストの走行開始である。哲男氏をコ・ドライバーに走りだす。一緒に来た直子さん、そして私の 妻を順番に同乗させたり、哲男氏の単独コース走行と、とても楽しく自由なイベントはアッという間に終了した。さらにその後の表彰式では、驚いたことになぜ か1位(なぜ自分が1位なのかはいまだにわからない……)を戴く。遠くから来たで賞?一番元気に走ったで賞?だろうか。夢のような一日が終わり、来てよ かったという充実感と、心地よい疲労感に酔いながらモンレリーからの帰路についた。モンレリーでのサーキット走行、様々な“アルピニスト”との出合い。マ ルセル・ユベール、アラン・セルパッチ、そしてレデレ氏との再会。ほんの数時間ではあったが、愛知県大府市の病院で仕事をしている私にとって、夢のような出来事であった。
最後にFabrice MAZE、Christophe PUND、Frederic GERARD・直子夫妻、T.D.F.の加藤哲男・薄明両氏、皆様の御厚意に対し、心より感謝します。

report=加藤仁(CG1997年12月号に寄稿)
写真はCG1997年12月号より転載

 


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